Q値の落とし穴・気密性を構成する要素に関する考察
パッシブハウスジャパンのメルマガの抜海記事です
専門家にも読んで頂きたい内容です
だいたいQ1住宅が乱立する時代です
お客様には、カタログスペックだけを信じず、しっかりと比較する事をお勧めします
私は、メーカー探しでなく、専門的知識のある 人 をハウスメーカー探しの指標にしてくれたら良いなと思います
Q1.0とQ1.6の違いは、数字の大きさほど、体感で大きく変わらないかもしれません
・・・以下抜粋・・・
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2)Q値の落とし穴 (代表理事 森みわ)
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Q値を理解される方が建築業界にもようやっと増えてまいりました。
そんな今、私達PHJは、“Q値は居住性に大きく関係する尺度ですが、
あくまでも省エネ設計の際の目安とするようにしてください”
というメッセージを発信しております。
建物の必要とする、床平米当たりの年間の暖房または冷房負荷(需要の年間合計)を
一律にするという住宅設計を行う際、Q値はどのようにして導き出されるか、
パッシブハウスを例にして詳しく考えてみましょう。
たとえば世界的に認知されるパッシブハウス基準であれば、
室温を20℃に保つための暖房需要は年間床平米当たり15kWhです。
ここに、パッシブハウス基準を満たす仕様が異なる二つの家(AとB)があるとします。
その場合、それらのQ値は必ずしも同じとは限りません。
以下に例を示します。
・日射取得がより多く見込めるAは、B程のQ値を達成する必要はありません。
・日射取得が同じ条件であったとしても、気密性能がより良いAは、B程のQ値を達成する必要はありません。
・気密性能も同じだったとして、蓄熱性能がより高いAは、B程のQ値を達成する必要はありません。
・気密性能も同じであったとして、Aの床面積の方が大きい場合、AはB程のQ値を達成する必要はありません。
・AがBよりも温暖な地域に建てられる場合、AはB程のQ値を達成する必要がありません。
要するに、立地条件や建物の形状等が変われば、
パッシブハウスに求められるQ値は変化するということです。
結果として、Q値や仕様規定でパッシブハウスを定義することは、
実際には不可能であるだけでなく、逆にQ値を下げるために窓の大きさが
どんどん小さくなっていく、というおかしな事態を引き起こしかねません。
日射取得が良く、遮蔽の手段が不足している状態での、不必要に良いQ値は、
夏の冷房負荷に必ずしも良い影響を与えないことも、シミュレーションによって分かっています。
温暖地域の日本版パッシブハウスを考えるとき、夏と冬のバランスを見ることが重要である
というのが私達PHJの認識です。
日本版パッシブハウスにおいては、深い庇や外付けブラインド等による日射遮蔽や、
無風状態でも温度差によって自然に室内の空気の対流が起きるような窓の配置が
必要不可欠になります。
実際、寒冷地仕様でQ値が0.8と良い山形エコハウスを東京に移築しても、
それほど冷房負荷が上がらない結果となるのは、
こういった基本的なルールが守られているからと言えます。
そんな訳で、次回の省エネ建築診断士セミナーでも、
「目指すは住宅における一次エネルギーの削減と、快適性。
Q値はその指標のうちのひとつであって最終目的ではない。」
ということを皆さんに正しく理解していただけたらと思います。
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3)気密性を構成する要素に関する考察 (理事 松尾和也)
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気密性というのは断熱性とは異なり、
建物を建てる前に計算によってきちんと確かめることができません。
はっきり言うと建物を建ててみて気密測定を行ってみない限り分からない
というのが正直なところです。
しかしながら、同じ仕様で何軒も気密測定を行っていると
自社物件の設計方法と施工技術であればだいたいこのくらいの値が出るという
勘所のようなものは分かってきます。
また、「A工法とB工法の場合はどちらの方が全体的に優れている」
といったようなことも分かってきます。
とまあ、極めて曖昧かつ経験値だけが物を言うような気密性ですが、
私なりに少しでも事前予想が建てやすくなる指標はないかと思って
前々から考えていました。
その内容をお伝えしたいと思います。
まず最初に日本の相当隙間面積C値とドイツの気密性の基準は異なります。
日本のC値は総相当隙間面積αAを床面積で割って計算します。
よって単位はc㎡/㎡となります。
それに対しドイツの基準では回/hというように
1時間で何回の換気量に相当するかという考え方です。
また測定する時の圧力もドイツの方が高く、減圧のみで測定する日本とは異なり、
ドイツでは加圧による測定も必要です。
要するにドイツの基準の方が厳しいわけです。
全く基準が異なるので、
日本基準とドイツ基準の単純な換算公式というものは存在しません。
建物の形状や面積、容積等によってかなり異なるからです。
ということで、パッシブハウス基準の0.6回/hという基準がC値ではいくらになるのか
というのが0.2~0.4くらいの間でばらつきがあるのもこういう理由からだと思われます。
ただ、どちらの基準にしてもA、Bの異なる建物があった場合、
優劣が逆転することはありません。
前置きが長くなりましたが、
私なりのある程度の事前予想できる項目をお伝えしたいと思います。
まず一つ目、Q値と同様に面積が小さい建物、また外皮表面積の大きい建物は
不利になりがちであるということが挙げられます。
これは理屈で考えると当たり前ですが、容積に対して表面積が増えるということは、
物理的に継ぎ目の数も増えるということにつながるからです。
二つ目ですが、引き戸系と開き戸系を比較した場合の開き戸系の優位性です。
これもいうまでもなく、感覚的に開き戸系の方がパッキンの効きが良いので
良い値が出ることが容易に想像できると思います。
ではどの程度違うのかということになりますが、
例えば1間幅高さ1200程度の標準的な引違窓と
大きさは同等で縦滑り出し+FIX窓を比較したデータによると(国内同一メーカー樹脂サッシ)、
50Paでの通気量はおおよそ4倍程度異なります。
もちろんこのデータを見たからといって最終結果である家の気密性がいくらである
と言えるものではありません。
また、この事実が分かっていても日本での住宅設計において
引き違い窓の重要性が高いことも否定できません。
ただ、この事実をしっておけば、今までなんとなく引違を使っていた小窓等を
縦滑り出し、横滑り出し、内倒し等に変えるだけで予算をほとんど増やさずに
気密性をアップさせる可能性が生まれます。
これだけ書いてもまだまだ全く定量的というには程遠いですが、
それでも知らないよりは知っておいた方がいいと思う指標です。
今後の設計の参考にしていただければと思います。
専門家にも読んで頂きたい内容です
だいたいQ1住宅が乱立する時代です
お客様には、カタログスペックだけを信じず、しっかりと比較する事をお勧めします
私は、メーカー探しでなく、専門的知識のある 人 をハウスメーカー探しの指標にしてくれたら良いなと思います
Q1.0とQ1.6の違いは、数字の大きさほど、体感で大きく変わらないかもしれません
・・・以下抜粋・・・
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2)Q値の落とし穴 (代表理事 森みわ)
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Q値を理解される方が建築業界にもようやっと増えてまいりました。
そんな今、私達PHJは、“Q値は居住性に大きく関係する尺度ですが、
あくまでも省エネ設計の際の目安とするようにしてください”
というメッセージを発信しております。
建物の必要とする、床平米当たりの年間の暖房または冷房負荷(需要の年間合計)を
一律にするという住宅設計を行う際、Q値はどのようにして導き出されるか、
パッシブハウスを例にして詳しく考えてみましょう。
たとえば世界的に認知されるパッシブハウス基準であれば、
室温を20℃に保つための暖房需要は年間床平米当たり15kWhです。
ここに、パッシブハウス基準を満たす仕様が異なる二つの家(AとB)があるとします。
その場合、それらのQ値は必ずしも同じとは限りません。
以下に例を示します。
・日射取得がより多く見込めるAは、B程のQ値を達成する必要はありません。
・日射取得が同じ条件であったとしても、気密性能がより良いAは、B程のQ値を達成する必要はありません。
・気密性能も同じだったとして、蓄熱性能がより高いAは、B程のQ値を達成する必要はありません。
・気密性能も同じであったとして、Aの床面積の方が大きい場合、AはB程のQ値を達成する必要はありません。
・AがBよりも温暖な地域に建てられる場合、AはB程のQ値を達成する必要がありません。
要するに、立地条件や建物の形状等が変われば、
パッシブハウスに求められるQ値は変化するということです。
結果として、Q値や仕様規定でパッシブハウスを定義することは、
実際には不可能であるだけでなく、逆にQ値を下げるために窓の大きさが
どんどん小さくなっていく、というおかしな事態を引き起こしかねません。
日射取得が良く、遮蔽の手段が不足している状態での、不必要に良いQ値は、
夏の冷房負荷に必ずしも良い影響を与えないことも、シミュレーションによって分かっています。
温暖地域の日本版パッシブハウスを考えるとき、夏と冬のバランスを見ることが重要である
というのが私達PHJの認識です。
日本版パッシブハウスにおいては、深い庇や外付けブラインド等による日射遮蔽や、
無風状態でも温度差によって自然に室内の空気の対流が起きるような窓の配置が
必要不可欠になります。
実際、寒冷地仕様でQ値が0.8と良い山形エコハウスを東京に移築しても、
それほど冷房負荷が上がらない結果となるのは、
こういった基本的なルールが守られているからと言えます。
そんな訳で、次回の省エネ建築診断士セミナーでも、
「目指すは住宅における一次エネルギーの削減と、快適性。
Q値はその指標のうちのひとつであって最終目的ではない。」
ということを皆さんに正しく理解していただけたらと思います。
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3)気密性を構成する要素に関する考察 (理事 松尾和也)
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気密性というのは断熱性とは異なり、
建物を建てる前に計算によってきちんと確かめることができません。
はっきり言うと建物を建ててみて気密測定を行ってみない限り分からない
というのが正直なところです。
しかしながら、同じ仕様で何軒も気密測定を行っていると
自社物件の設計方法と施工技術であればだいたいこのくらいの値が出るという
勘所のようなものは分かってきます。
また、「A工法とB工法の場合はどちらの方が全体的に優れている」
といったようなことも分かってきます。
とまあ、極めて曖昧かつ経験値だけが物を言うような気密性ですが、
私なりに少しでも事前予想が建てやすくなる指標はないかと思って
前々から考えていました。
その内容をお伝えしたいと思います。
まず最初に日本の相当隙間面積C値とドイツの気密性の基準は異なります。
日本のC値は総相当隙間面積αAを床面積で割って計算します。
よって単位はc㎡/㎡となります。
それに対しドイツの基準では回/hというように
1時間で何回の換気量に相当するかという考え方です。
また測定する時の圧力もドイツの方が高く、減圧のみで測定する日本とは異なり、
ドイツでは加圧による測定も必要です。
要するにドイツの基準の方が厳しいわけです。
全く基準が異なるので、
日本基準とドイツ基準の単純な換算公式というものは存在しません。
建物の形状や面積、容積等によってかなり異なるからです。
ということで、パッシブハウス基準の0.6回/hという基準がC値ではいくらになるのか
というのが0.2~0.4くらいの間でばらつきがあるのもこういう理由からだと思われます。
ただ、どちらの基準にしてもA、Bの異なる建物があった場合、
優劣が逆転することはありません。
前置きが長くなりましたが、
私なりのある程度の事前予想できる項目をお伝えしたいと思います。
まず一つ目、Q値と同様に面積が小さい建物、また外皮表面積の大きい建物は
不利になりがちであるということが挙げられます。
これは理屈で考えると当たり前ですが、容積に対して表面積が増えるということは、
物理的に継ぎ目の数も増えるということにつながるからです。
二つ目ですが、引き戸系と開き戸系を比較した場合の開き戸系の優位性です。
これもいうまでもなく、感覚的に開き戸系の方がパッキンの効きが良いので
良い値が出ることが容易に想像できると思います。
ではどの程度違うのかということになりますが、
例えば1間幅高さ1200程度の標準的な引違窓と
大きさは同等で縦滑り出し+FIX窓を比較したデータによると(国内同一メーカー樹脂サッシ)、
50Paでの通気量はおおよそ4倍程度異なります。
もちろんこのデータを見たからといって最終結果である家の気密性がいくらである
と言えるものではありません。
また、この事実が分かっていても日本での住宅設計において
引き違い窓の重要性が高いことも否定できません。
ただ、この事実をしっておけば、今までなんとなく引違を使っていた小窓等を
縦滑り出し、横滑り出し、内倒し等に変えるだけで予算をほとんど増やさずに
気密性をアップさせる可能性が生まれます。
これだけ書いてもまだまだ全く定量的というには程遠いですが、
それでも知らないよりは知っておいた方がいいと思う指標です。
今後の設計の参考にしていただければと思います。
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